千日手すらあり得る難解な状況を経て、一時は菅井竜也八段が藤井聡太叡王を押しておりました。しかし、お互いに時間が少なくなり一分将棋にまで追いやられる中で、菅井八段側の緩手を藤井叡王が見事に咎めてリードを奪い返します。最後は藤井叡王が菅井八段の玉を即詰みに討ち取り、見事に逆転勝ちとなりました。163手にも及ぶ大熱戦で、最後まで見応えたっぷりの素晴らしい対局でした。
藤井聡太叡王が今回勝利できたのは、何と言っても終盤力の差というところでしょうか。やはり、ここぞという場面での藤井叡王の指し手の正確さには度肝を抜かれます。とは言え、菅井八段にはかなり攻め込まれておりましたし、一手間違えれば敗勢濃厚でしたので、やはり本人としても難しく感じていたものと思います。叡王の防衛に王手をかけることはできましたが、名人戦七番勝負の対局と平行していることもあり、藤井叡王にとっては気の抜けない日々が続くことでしょう。この状況の中で、果たして3期連続の叡王防衛となるでしょうか。
一方の菅井竜也八段、第2局では会心の将棋で1勝をあげて、今回の対局でも大きな見せ場を作ることができました（結果として敗れはしてしまいましたが）。昨季の順位戦A級でも素晴らしい指し手で藤井叡王に土を付けましたし、藤井叡王にとっては依然として手強い相手であるのは間違いありません。次の対局では是非とも白星をあげて、この五番勝負をフルセットに持ち込んでいただきたいと思っています。そして、第58期（2017年）の王位戦以来となるタイトル2期目を獲得できたら、将棋界はもっと面白くなるかもしれません。
叡王戦五番勝負の第4局は、今月28日（日曜）に予定されています。日程は少々開いてしまいますが、お二方にはタイトル戦にふさわしい熱戦を引き続き繰り広げていただきたいところですね。
