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【創作のヒント】別に、今この場で書けなくても良いんじゃない

もしかすると、君は同人で小説を書いている身かもしれない。あるいは、書きたいと思いながらも、なかなか書けない身であるかもしれない。

私はどちらかと言うと後者のタイプだ。二次創作の小説を書くという活動を細々と続けていながらも、上梓しきれた作品は、おそらく、両手の指で数えられるほどだけなのではないか。たいていは途中で止まってしまうか、もしくはネタのメモ程度に終わってしまう。

このことに関しては、色々と言い訳できる。しかし、「書こうとしたが完成できなかった」という事実だけは、どんなに振りほどこうとも、ずっとついて回るものだ。

さて、こういった事実は、果たしてネガティブなままに受け止めるべきなのだろうか――というのが、この記事の議題である。

 

たいていの場合、書けないのは「努力が足りないから」「才能がないから」ではない

小説に限った話ではないが、作品を創りあぐねている人が決まってよく口にするのが、「努力が足りないから」「才能がないから」私には作品ができないんだ、という愚痴である。

確かに、こういった言葉が適合することもあるだろう。例えば、「超一流級」の作品を創ろうと言うのは、莫大な才能と努力を要することであり、並大抵のものでは決してない。

ただ、ここで一つ問いたいことがある。

「あなたが創ろうとしているのは、果たして超一流と呼ばれる類の作品だろうか?」

プロを目指している方ならばともかく、同人という舞台で活躍されている方々ならば、答えは自ずと「No」になるだろう。むしろ、「才能なんてなくても良いから、私は私なりに自分の思い描く世界を創りたい」と言いたくなる人も多いのではないか。同人の世界で生きるというのは、おそらく、そういうことだ。

それでは、足りないのが才能でも努力でもなければ、いったい何だろうか?

 

どんなに想像力が潤沢であっても、素材と時間がないと何にもならない

実は、創作を行うにあたっては、まず必要なものが2種類ある。「素材」「時間」だ。

「素材」の方は分かるだろう。「経験」「知識」などと言い換えることもできるが、これら全てを包容する言葉としてこの言葉を選定した。

例えば、ワインやビールを飲んだことなしに、想像だけでこれらの味覚を描写することは極めて難しい。海を見たことのない人が写真だけで海の情景を描写するということも無理難題である。コンピュータの知識に乏しいものが、ネットワークの世界を表現するということも困難を極める。

こういうように、「書きたいけど書けない」となれば、まずは自分の「引き出しの数」が足りていないことを自覚すべきである。関連する文献などを読み漁って、貪欲にインプットに励もう。

それでは「時間」はどうか。もちろん、ただ単に執筆に当たる時間だけを指すのではない。上に書いた「インプットに励む時間」も必要だし、ネタやプロットを練り込む時間も不可欠だ。さらには創作以外の時間、家事や仕事、休養や睡眠の時間も必要である。

一日24時間のうち、どれくらい時間を創作に割けば良いだろうか。これは、「割く時間が多ければ多いほど良い」というものではない。一日30分から1時間ほど、細々と続けてゆく方が功を奏す、という場合もある(こちらの方が良いという人も多数なのではないだろうか)。

そして、創作以外の時間で経験したことを、どうやって創作に活かすかという考え方も重要だ。言ってみれば、24時間365日、経験する出来事一つ一つが、創作につながっていると言っても、決して言い過ぎではない。

まずは、どっしりと構えて少しずつピースを採集すること。そうすれば、自ずから創作の扉は開かれるのではないだろうか。

 

書けないからと言っても、決して焦らないこと

しかし、どう頑張っても書けないでいる君は、こう反論するかもしれない。

「そんなこと言ったって、周りの皆は書いているし、作品も出している。私も乗り遅れたくない!」

おそらく、この「周りから遅れたくない」という気持ちこそが、逆に、作品を創れない大きな要因ではないか、と私は思う。

締切に追われつつ売上を気にしなければいけない商業作家は、当然、一ヶ月の遅れが大きなリスクを生む場合もあるだろう。だが、君は果たしてそういう立場なのだろうか。むしろ、「書かないでも大丈夫だけど、書きたいから書いている」のではないか?

もう一度言う。「あなたは、書きたいと思っているから書いているのではないですか?」

もしそうであるならば、義務感や焦燥感に苛まれながら書こうとするというのは、はっきり言って、愚の骨頂だ。しばらく休む必要がある。

仮にこういったときは、あえて創作から離れてみるのも手だ。一ヶ月から一年くらいの長い間、しばらく筆を置いてみるのが良い(一日から一週間と言った短期間では絶対に駄目だ)。

別に、楽しくないなら書かなければ良い、それだけのことだ。また楽しくなりそうなときに書けば良いのである。それに、休筆している間に、必要なピースは自然と増えていることだろう。

「今でしょ」という某先生の言葉が一時期流行ったけれども、少なくとも同人の創作に関して言えば、「いつやっても許される」類のものだ。つまり、今すぐに取り掛かる必要はないのである(今すぐ、流行に乗りたいのであれば、私は止めはしないが)。

むしろ、私は冒頭の議題について、こう言いたいのである。

「今、書けなくても良いんじゃないのか。近い将来、書ければ良いのだから」

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