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ファーストキャビン及び関連会社が自己破産手続きを開始した件について思う

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「ファーストキャビン御堂筋難波」の客室(以前利用したときに撮影したもの)

宿泊施設にとって、宿泊客の急激な減少は死活問題である。

「ファーストキャビン」の事業概況(倒産情報から)

帝国データバンクの記事によれば、自己破産申請があったのは今月24日(昨日)。負債総額は関連会社4社も含めると37億円にのぼるということだ。なお、フランチャイズ店については、店舗独自の判断で営業再開となる可能性がある。

 (株)ファーストキャビンは、2006年(平成18年)7月に設立した簡易宿泊施設の企画、経営業者。「FIRST CABIN」(ファーストキャビン)の屋号で高級感を持たせたカプセルホテルを企画、運営し、2019年末時点で直営・FC合わせて全国に約26店舗を展開。サラリーマンなどの日本人客を中心に、インバウンド需要による外国人需要も大幅に増加、2017年3月期の年収入高は約15億7900万円を計上していた。

 しかし、近年は民泊施設の普及などで宿泊施設間の競合が激化、当社においても急激な店舗拡大に対して、稼働率が計画を下回るなど業績悪化を招き、人件費が負担となったこともあり、営業段階からの赤字に転落していた。また、近時は新型コロナウイルス感染拡大の影響で、インバウンド需要が低下、国内旅行客の減少の煽りも受け、当社の稼働率も前年の10%程度にとどまるなど急速に事業環境が悪化。各ホテルを休業させる一方で、スポンサーによる資金支援も検討したが、事業再開のメドが立たないことから頓挫、資金繰り悪化が顕著となり、今回の措置となった。

引用元:倒産速報 | 株式会社 帝国データバンク[TDB]

参考:JR西日本との合弁事業解散(4月16日付け)

所感

ファーストキャビン社について

この会社が自己破産にならざるを得なかったのは、「急速な店舗拡大」に打って出てしまったことはもちろん、カプセルホテルとしての在り方を取り違えてしまったのが1つの要因なのではないか、と思っている。

こういった宿泊施設は、盗難被害に遭いやすいなどの理由で、そもそも危険と隣り合わせだ。そして、部屋も狭い分、なかなか自由がきかない。安価で泊まれるのは良いが、それだけ大きなリスクを背負わなければいけない。まさに「安かろう悪かろう」の典型だと思う。どうしても宿泊費を安く抑えたい人や急な出張などで泊まる場所に困っている人を除けば、こういった施設はそもそも利用しない(ちなみに私が以前利用したときは後者であった)。

特に、セキュリティをしっかりしたい方であれば、「もう少し高くても良いから普通のビジネスホテルに切り替える」という風にするのではないか。まともな企業、団体ならばカプセルホテルに所属者を泊まらせるはずがないし、盗難されたら困るものを持ち歩いている人にとっても、カプセルホテルを選ぼうなどとは、まず考えられない。

そして、最近は安く泊まれる宿泊所が多数できてしまっているというところから、もはや安さだけでは売りにならなくなってきた。どんなに高級感を演出しようとも、カプセルホテルがカプセルホテルである以上、設備の増強やセキュリティの管理強化にも限界がある。これくらいなら、客室に鍵付きドアのあるところに行ったほうが、よほど安全だし居心地も良い。こういったところから、お客さんが定着せず、他の施設に流れていってしまったと思われる。

結果として、今回は新型コロナウィルス(COVID-19)が大きな引き金となり自己破産に陥ってしまった。けれども、JR西日本との合弁事業が解散となったところを考えてみても、ファーストキャビン社に今後の見込みはないと受け取られていたかもしれない。

業界全体について

今回のCOVID-19感染流行において煮え湯を飲まされている業種の1つが、宿泊業であろう。海外からの旅行客がほぼゼロになったことに加え、国内でも外出自粛の動きが一段と強まったことにより、そもそも利用客が全然いない、というのが業界内で喫緊の問題となっているのではないか。

企業として体力・財力の残っているところは、県外移動自粛の要請をうけて、ゴールデンウィークを中心に休業することができるだろう(それでも、例えば出雲大社付近の竹野屋旅館が早々と休業開始したのは称賛ものだが)。

一方で、格安価格を売りにしているビジネスホテルやカプセルホテル、とりわけ地方の企業が運営している小規模のところなどについて、今後資金繰りが悪化することになろうことは、もはや目に見えている。また、観光客頼みにならざるを得ないリゾートホテルや老舗旅館も、赤字を垂れ流しているまま営業を続けるわけにはいかない。早く何とかしないと、倒産に向かって真っ逆さまである。

駅チカのビジネスホテルはともかく、観光地に多数ある宿泊施設は「不要不急の外出をしている人たち」がターゲットになっている。そういった方々がいなくなってしまったら、もはや商売としては成り立たなくなってしまう。これによりホテルや旅館の運営企業が倒産となった場合、そこで働いている人たちはいったいどうなってしまうのだろうか。

兎にも角にも、都道府県や自治体、業界団体などからの、一刻も早い支援を期待したいところだ。そして、突然の倒産により路頭に迷う人たちが続出しないことを願うばかりである。

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