「石見銀山」の玄関口であるJR大田市駅から歩いて3分ほどのところに、その建物はありました。
写真の施設について
大田市駅前の商業施設「パル」。1982年に開業してから、2015年5月11日付で運営会社が自己破産の手続きを開始するまでの約33年もの間、大田市やその近辺の住民を支え続けてきたようです。廃業当時に出されたニュースによれば、1993年には44億円もの売上があったということらしいですね。しかし、その後は、バブル崩壊や生活スタイルの変化の影響を受け、売上は減る一方でした。
当該ニュースに少し目を通すだけでも、当時の混乱ぶりが分かるというものです。本当に突然の閉店だったようで、閉店セレモニーらしき情報も出てきません。何より、自己破産となった日にも買い物をしようとしている人が訪れていたという記述から、お客さんには何も知らされていなかったようです。本当に「夜逃げ」そのものでしかありませんね……。
翌日の12日には、食品スーパーの在庫処分のため、特別に店を開けているということだそうです。しかし、それ以後は、本当に何の音沙汰もありません。
現況
閉店以後も土地や建物の買い手はついていないらしく、廃業から5年が経過しようとしている今になっても、当時の面影が生々しく残っているだけです。入口のシャッターは閉まったまま、何も停まっていない駐車場跡地、そして、未だにぶら下がっているのが、石見銀山の世界遺産登録を祝賀した横幕((なお、石見銀山が世界遺産に指定されたのは2007年のことで、その後2010年に登録範囲が拡大されています。))。その全てが、今もなお、公に晒されています。
付近を通っている国道9号線には、大型のスーパーやドラッグストアなどが立ち並んでおり、日常生活を送る分には困らないでしょう。「パル」が廃業したところで、近隣住民の生活には、直ちに大きな変化など起こらなかったことは想像できます。
そうは言っても、地方都市が置かれている厳しい現実を突きつけてくるのは、最早言うまでもありません。市の玄関口である駅の目と鼻の先に佇んでいるランドマークたるものが、全くもって稼働していないのですから。
かつて賑わっていた駅前の商業施設は、姿かたちを変えることなく、駅を通るあらゆる列車を、今日も眺めてくれていることでしょう。
参考資料(当時のニュース)
【続報】解体に向けてついに動き?(2022年5月30日)
一部メディアの報道によれば、当該施設の解体に向けて、大田市が地権者らの地域団体に助成金を付与することを表明したということです。
今後の詳しい段取り等はまだ分かりませんが、できる限り首尾よく行われると良いですね。