東京都豊島区にありますサンシャインシティ60ビルの入口前において、「マンガとアニメの聖地」ロゴなどがデザインされたピンク色の郵便ポストが設置されております。こちらは、豊島区の観光戦略PRの一環と思われます。
以前、こちらの郵便ポストまで足を運んでまいりましたので、簡単にまとめることといたします。
豊島区の「国際アート・カルチャー都市構想」
「国際アート・カルチャー都市としま」とは
「国際アート・カルチャー都市としま」は、東京・豊島区が目指すまちづくりのビジョンで、アートと文化を軸に持続可能な都市を構築し、国内外にその魅力を発信する戦略です。この戦略が取り入れられた背景には、いくつかの具体的な理由と状況があります。
まず、2014年に日本創成会議から豊島区が23区で唯一「消滅可能性都市」と指摘されたことが大きなきっかけです。この指摘は、人口減少や高齢化による地域の衰退リスクを示しており、豊島区にとって危機感を募らせるものでした。これに対抗するため、区はこれまで進めてきた「文化創造都市づくり」や「安全・安心創造都市づくり」をさらに発展させ、新たな都市像を打ち出す必要がありました。そこで、アートと文化の力を活用し、まち全体を活性化させる戦略として「国際アート・カルチャー都市構想」が生まれたのです。
次に、豊島区が持つ多様な文化資源を活かす意図があります。池袋を中心とする劇場や芸術施設、伝統芸能、多国籍なコミュニティなど、豊島区には元々豊かな文化的土壌がありました。これらを単なる地域資源にとどめず、都市の魅力として国内外に発信することで、観光客やクリエイティブな人材を引きつけ、地域経済の活性化を図ろうとしたのです。特に、芸術文化を「生活文化」や都市インフラの整備と結びつけることで、従来の枠を超えた創造的なまちづくりを目指しました。
また、SDGs(持続可能な開発目標)との整合性も重要な理由です。この構想は「誰一人取り残さない」というSDGsの理念と一致しており、2020年に豊島区が「SDGs未来都市」に選定されたことも後押ししています。アートと文化を通じて多様な人々が参加し、協働する場を創出することで、社会的包摂性や持続可能性を高める狙いがありました。
最後に、都市のイメージ向上と競争力強化も背景にあります。グローバル化が進む中、東京23区の中でも独自性を発揮し、国際的な注目を集める必要がありました。アートとカルチャーを核に据えることで、豊島区は「劇場都市」としてのブランドを確立し、居住者や来訪者の増加につなげようとしたのです。
このように、「国際アート・カルチャー都市としま」の戦略は、危機感への対応、地域資源の活用、持続可能性の追求、そして都市ブランドの強化という複数の理由から取り入れられたものと言えます。
「マンガとアニメの聖地」としま
「マンガとアニメの聖地」としての「としま」(豊島区)は、日本の漫画やアニメ文化と深い結びつきを持つ地域として知られています。
豊島区が「マンガとアニメの聖地」と呼ばれる最大の理由は、戦後日本の漫画史に欠かせない「トキワ荘」があった場所であることです。トキワ荘は、1950年代から60年代にかけて、手塚治虫、藤子不二雄(藤子・F・不二雄と藤子不二雄A)、石ノ森章太郎、赤塚不二夫といった伝説的な漫画家たちが若手時代に暮らしたアパートです。南長崎地区に位置し、彼らが共同生活を送りながら創作活動を行ったこの場所は、日本の漫画文化の礎を築いた象徴として語り継がれています。元の建物は老朽化で取り壊されましたが、現在は「豊島区立トキワ荘マンガミュージアム」として再現され、観光スポットとなっています。
さらに、豊島区はトキワ荘の遺産を活かし、「マンガの聖地」としての地位を強化する取り組みを進めています。例えば、「トキワ荘協働プロジェクト協議会」では、地元住民や商店会と協力して、トキワ荘通りお休み処や関連イベントを展開し、地域全体で漫画文化を盛り上げています。また、池袋エリアにはアニメ関連企業やショップが集積し、特に「アニメイト池袋本店」はアニメファンの聖地として全国的に有名です。このような環境が、豊島区を「アニメの聖地」としても位置づけています。
近年では、人気作品とのコラボレーションも積極的に行われています。例えば、『銀魂』20周年を記念したデジタルスタンプラリーや、『デュラララ!!』の舞台として区内を巡るイベントが開催され、ファンが実際のロケ地を訪れる「聖地巡礼」を楽しめる機会が提供されています。これらは、漫画やアニメの舞台としての豊島区の魅力をさらに高める試みです。
このような歴史的背景と現代的な取り組みが融合し、豊島区は「マンガとアニメの聖地」として認知されるようになりました。地域資源を活用した文化発信は、観光振興や若者層の誘致にもつながり、「国際アート・カルチャー都市としま」の一翼を担っています。
「マンガとアニメの聖地」ポストについて
描かれているキャラについて


このピンク色のポストには2種類のキャラクターが描かれています。
左側、右側、背面の3箇所にて描かれている犬のようなキャラクターは「ぽすワンちゃん」。日本郵便オフィスサポート株式会社のキャラクターであるとのことです。
もう1つのキャラクター、背面にてカメラを構えているフクロウのようなキャラクターには「としま ななまる」という名前がついています。池袋駅前郵便局でもオリジナルデザインのポストのモデルになっているなど、見覚えがある方も少なくないのではないでしょうか。
設置時期について
私の検索した範囲では具体的な公式リリース等は見つかりませんでした。ただし、2018年10年には既に存在していたようです。
設置場所・アクセス
このポストは、池袋サンシャインシティ60ビルの入口すぐそばに設置されております。かなり目立つ場所に設置されており、発見自体はかなり容易です。
ただし、早朝や深夜を除いてかなり人通りの多い場所ですので、もしじっくりと眺めたい方は、なるべく閑散としていそうな時間帯を選ぶと良いでしょう。